「手先が器用でないと外科医になれない?」現役医師が答えます。
現役医師のDr.だだだ です。
今回のテーマは「手先が器用でないと外科医になれなの?」これも、よく聞かれる質問です。
結論としましては、
1.医師免許さえあれば、外科医を名乗ることは出来る。
2.不器用な人が上手い外科医になることは、難しい。
3.一口に外科といっても多くの専門があり、手先の器用さが求められる程度が異なる。
4.手先の器用さだけでは、上手な手術は出来ない。
1.医師免許さえあれば、外科医を名乗ることはできる。
日本は自由標榜性といって、医師であれば自分の専門を何と言っても良いことになっています。これは、先進国ではあり得ないこと。普通の国では、優秀な医師から順に好きな専門を選んでいき、劣等生は余った専門に行きます。この方法にも賛否両論がありますが、専門家の質の担保には有効です。日本では昨日まで精神科や内科をやっていた医師が、突然美容外科を名乗ることも可能です。極端な話、脳や心臓の手術をしたとしても法的に問題はありません。なので、成りたければ外科医に成ること自体は誰でもできます。
(麻酔科医、産婦人科、精神科、産業医は例外的に国の資格を取らないと出来ない仕事があります。今回は割愛。)
2.不器用な人が上手い外科医になることは難しい。
外科手術は基本的に職人芸です。顕微鏡手術ではミリ単位の血管を髪の毛より細い糸で縫い合わせたり、腹腔鏡手術では長いマジックハンドの様なもので細かい作業をしたり。一朝一夕に身に付けられる技術ではありません。やはり、細かい作業が嫌い、苦手だと思っている人は外科医になる道を選ばない方が良いと思います。
3.一口に外科といっても多くの専門があり、手先の器用さが求められる程度が異なる。
手術をする診療科は実は沢山あります。整形外科、心臓外科、脳外科、消化器外科、呼吸器外科、形成外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻科、皮膚科等々。心臓外科、脳外科などは、対象物が細かく、命に直結するため抜群の器用さが必要です。形成外科や整形外科の顕微鏡手術や、腹腔鏡手術も繊細な作業です。ただ、医師の会話の中でしばしば言われるのが、泌尿器科、産婦人科はがさつな医師が多いということ。手先の器用さに自信がないけど、どうしても外科をやりたい人は、こういった視点で専門を選ぶのもありです。もちろん、一流の外科医はどの診療科でも、手先は器用です。
4.手先の器用さだけでは、上手な手術をすることができない。
これは多くの有名な外科医がインタビューとかでも言っていること。僕も実際に手術をするときに痛感します。いくら、手が動いても次に何をするか分かっていないと手術は進みません。人体は非常に複雑な構造をしているため、構造の理解が必須です。いくら足が速くても道順が分からなければ、目的地にはなかなかたどり着きませんよね。
手術中に患者さんの状態が急変することがあります。こういった場合は、技術だけでなく知識が問われてきます。
医療は日進月歩の世界で、手術は日々改良かれています。学会で勉強したり論文を読むことを怠っていては、そもそもやっている手術が古いということも。
手術は長いものでは10時間以上かかるものもあります。診療科によっては、強靭な体力と精神力も必要です。
以上のように、
外科医になること自体は医師なら誰でもできます。しかし、いい外科医になるためには手先の器用さは必須で、知識面でのアップデートも求められます。おまけに体力、精神的にも強い。手術が上手い先生は本当に尊敬できる方ばかりです。
0コメント